自己覚知とは、自身が意識的に自身のことを知り、自身の理解を行うことをいいます。
相談援助の場面では受容的、支持的、共感的な態度で相手の話を聞き、相手の個性や価値観を尊重することで信頼関係を作っていきます。
批判的、否定的な感情が伝わると、信頼関係を築きにくくなってしまいます。
相手に自身の価値観、感情、思考をそのままぶつけてしまうと、その考え方が相手に対して批判的、否定的なものであれば、相手から信頼してもらうことは難しくなります。
つまり、自分の価値観、感情、思考の傾向を知り、自身のことをよく理解しておけば、相手に対して批判的、否定的な言動を意識的に避けることができるので、信頼関係を築きやすくなります。
この記事では、自分の価値観や感情、思考の傾向を知る方法である【自己覚知】のポイントを説明します。
相談業務初心者だけでなく、対人援助を行う方にとって大事なことなので、ぜひ読んでみてください。
それでははじめていきましょう。
自己覚知の進める上でのポイント
自分の存在について考えてみる
自分のことは自分が一番よくわかっていると思っている方が多いと思いますが
「あなたはどういう人ですか?」
こう聞かれたときにすぐに答えることができますか?
意外とでてこなくないですか?
私もそうだったのですが、自分はどういう人間なんだろうと考える機会ってそんなにないので、今回を自分を知る良い機会として一度、考えてみてください。
自身のことを可視化する
自身の情報をノートや紙に書き出してみましょう。
まず、名前や性別、生年月日、年齢、住所、趣味など、自身の基本情報を思いつくままに箇条書きでいいので書いてみてください。
これは迷うことがなく、すぐに出てくると思います。
それだけで終わるのではなく、もう少し深掘りをして、自身に問いかけて、それに返答していく形でやってみてください。
難しく考えることではなくて、日常的なものでぜんぜん問題なしです。
- 自分の性格は?
- 食べ物は何が好き?
- 好きなスポーツは?
- 自分の得意なことは?
- 自分の夢は?
- 今、欲しいものはある?
- 幸せと感じることは何?
自己紹介文を作ってみる
箇条書きで書いた自身の情報をまとめて自己紹介文を作ってみましょう。
今はSNSを利用している人が多いので、SNSのプロフィール文をイメージすると作りやすいと思います。
自己紹介は、あなたのことを知ってもらうためのもの、あなたという存在をアピールするためのものなので
自分も知らない内容は相手に伝わることはありません。
だからこそ、あなたという存在をアピールするためには、自身のことをまず知ることが必要です。
自分が他者と交流しているときの反応を意識する
誰かと会話しているとき、相手の話の内容について自分はどう感じているのか、自分が好きな人と苦手な人の違いなど相手に抱く感情に注意してみてください。
同じ価値観の人であれば好きな人、積極的に関わりを持ちたいとポジティブな感情を抱くし、異なる価値観の人であれば嫌い、苦手などのネガティブなイメージを持つと思います。
どんな内容がその感情にさせるのかを紙やノートに書き出して、整理してみると良いですね。
自身では難しいのであれば、家族や友人にお願いして、自分はどう見えているのかを教えてもらうのもいいですね。
グループワーク
ケアマネの研修では、よくグループワークが行われます。
グループワークとは、1つのテーマについて数人のグループを作成し、意見を出し合いながらまとめていくものです。
今回のテーマである【自己覚知】を目的としたグループワークはよく扱われるので、同じ内容の研修を数回受けても結果が毎回、違ったりしてとてもおもしろいですね。
私がケアマネ研修で受けたものを紹介しておきます。
自身の価値観を認識する
数人のグループになり、個人ワークで8つの項目に順位付けを行います。
- 家族
- お金
- 健康
- 夢
- 社会秩序
- 友情
- 愛
- 自由
なんとなく順位付けをするのではなく、その順位付けにする理由も考えながら行います。
価値観の違いを認識する
個人ワークでそれぞれがつけた順位をグループ内で照らし合わせていきます。
自身がつけた順位がグループメンバーと同じものもあれば、違うものも当然でてきます。
それぞれがその順位をつけた経緯や思いを発表します。
最終的にグループとしての順位付けを話し合って決めていきます。
私が行ったときは、7人ぐらいのグループだったと思いますが、私とまったく同じ順位付けをした人はひとりもいませんでした。
さらにグループ内でも全く同じ順位付けの人はいなかったので、いろいろな考え方があるんだなとびっくりしたのを覚えています。
各グループの順位付けを発表する
グループ内で話し合いをしてつけた順位を発表していきます。
1位は同じところが多かったですが、それ以外はほぼバラバラでした。
この研修のねらいは
✔自身の価値観を認識する
✔価値観は人によって違うもの、違っていて当たり前
✔自身とは違う価値観を尊重する
✔自身とは違う価値観を受け止める、理解する
このことを認識しておくことで、自身の価値観と異なる場面に遭遇したときに、自身の価値観を押し付けずに話を聞くことができるようになるということですね。
まとめ
自己覚知は自分を知ることです。
自分を知ることは、自分の強み、弱みも知ることができます。自分の強みを知れば、その部分においては自信を持てるし、弱みを知れば、自分の苦手な部分の克服につなげることができます。
また、自分を知ることで相手のことも理解しやすくなります。
異なる価値観に遭遇したとしても、価値観や考え方は人それぞれ、違っていて当たり前と自身の価値観を押し付けずに相手のことを尊重し、理解することができるでしょう。
それこそが、相談業務を行う上で必要な考え方です。
今回の記事が自分を知るきっかけになり、相手の気持ちがわかる良い相談員になる参考になればうれしいです。